上毛新聞社 医療・食・農・福祉の新鮮情報紙「元気+らいふ」4月号vol.37 より転載

特定の看護分野で熟練した技術と知識を備え、水準の高い看護を実践できる認定看護師。独立行政法人国立病院機構・渋川医療センターの石田ゆかりさん(35)は、県内で数少ない慢性呼吸器疾患看護の認定看護師。呼吸機能が低下した患者に対して、維持・向上のためのリハビリ支援や、在宅酸素療法などセルフケア支援に取り組んでいる。呼吸器疾患の専門病院を掲げる渋川医療センターで最前線に立つ。

入間看護専門学校 第16期 卒業生

幼児期の病気で志す

3歳の時、首に腫瘍ができて手術を受け、小学校入学まで通院が続いた。「手術はつらかったし幼いころは手術跡がコンプレックスにもなった。でも、いい思い出となっているのは看護師さんの接し方や対応が良く、忘れられないから」。幼稚園の時から抱いた「将来は看護師に」という夢を、ぶれることなく貫いた。

高校卒業後、埼玉県内の看護学校に進み3年間学んだ。看護師資格を目指す中、自身の幼いころの経験もあり漠然と「小児科で働きたい」という思いがあった。同時期に友人が白血病で前橋市内の病院に入院したのをきっかけに、同病院の血液内科で働くことを志し、入職した。

日常の生活支える

転機はプライマリーナーシングを担当した若い男性患者との出会い。移植による合併症により肺を悪くし、28歳の若さで在宅酸素療法を余儀なくされることに。「チューブをつけた生活に戸惑う患者さんをサポートする知識が自分になかった」と振り返る。

海外で行われている看護に関心があり、27歳の時にオーストラリアに2年間留学。帰国後、呼吸器疾患の専門医療施設だった渋川医療センターの前身、西群馬病院に勤務することになった。福井大学で6カ月間学び、一昨年6月に認定看護師の資格を取得した。

相談や後進の指導

認定看護師の役割は主に三つ。習得した看護技術を用いて水準の高い看護を行う「実践」。看護実践や院内講演などを通しての後進の「指導」。患者さんとの「相談」。例えば在宅酸素療法でも、最近では機器が進化し、リュック型やショルダー型タイプもあり、患者さんに対してアドバイスできるよう最新の情報を手に入れるようしている。1、2年目の若い看護師に人工呼吸器についての指導も行う。

渋川医療センターは呼吸器内科の病棟が2棟ある。多くの患者と接する中、オーストラリア留学で培ったコミュニケーション能力が役立っているという。「患者さんから『息が切れずに外出できた』『酸素を持ちながら旅行に行けた』といった声を聞けるとうれしい」とやりがいを感じている。「今後は慢性呼吸器疾患の特定行為を行える資格を取得し、さらにスキルアップを図りたい」と、さらなる成長を期す。


認定看護師とは

特定の分野で、熟練した看護技術と知識を持ち、水準の高い看護実践のできる看護師。慢性呼吸器疾患看護のほか、救急看護など21分野がある。看護師などの資格を持ち、実務経験5年以上が必要。認定看護師教育機関で教育課程(6か月・615時間以上)を修了し、認定審査に合格すると、認定看護師となれる。